展開地域名: 東広島市
解決すべき課題
■東広島市では、救急時の対応において以下のような5つの改善すべき課題があった:
1. 救急隊の現場滞在時間を短縮したい
2. 救急隊の病院滞在時間を短縮したい
3. 救急報告書の作成時間を短縮したい
4. 転院搬送を削減したい
5. 各種システム間でデータを連携したい
(Smart119 Inc.「株式会社Smart119が「東広島市救急業務システム(HECRS)」の運用を開始」参照。)
解決の手法
■課題に関連した救急活動の効率化を図るため、令和 5 年 4 月から東広島市消防局は、救急搬送時の患者の情報をデジタル化し、複数の医療機関とリアルタイムで共有できるシステム、「HECRS(イクルス)」を導入した。ドクターヘリを含めて、本システムは救急の現場に活用されている。
● HECRSは千葉大学発医療スタートアップ企業の株式会社Smart119が提供する救急医療支援システム「Smart119」を東広島市向けにカスタマイズしたシステム。
(Smart119 Inc.「企業ストーリーPR TIMES」、「株式会社Smart119が「東広島市救急業務システム(HECRS)」の運用を開始」参照。)
<HECRSの機能と特徴>
・報告書作成機能:
救急活動中に救急隊がタブレット等で入力した情報から報告書を自動作成するもので、東広島市消防局の仕様に合わせた『HECRS』独自の機能。従来、救急隊が帰署後に作成していたが、『HECRS』導入により搬送中や帰署中での作成が可能となる。
・転院搬送予測機能:
タブレットに傷病者情報を入力すると、過去3年分のデータから解析された転院確率を算出するAIモデルを構築。病院選定時のサポートをする機能。
・患者監視装置との連携機能:
救急活動時のバイタル項目の入力作業を支援する機能。救急車内に設置されている患者モニタリング機能付き除細動器『X Series™』(旭化成ゾールメディカル株式会社製)と連携し、『X Series』で測定したバイタル値や心電図の画像データを『HECRS』へ自動で取り込む。バイタル値や画像データは、医療機関と共有することも可能。
また、救急隊から医療機関へ引き継ぐ際の申し送り票がペーパーレスとなり、『HECRS』に搭載された「医師の署名機能」で、タブレットや医療機関側画面から署名をすることができる。そのため、引き継ぎ時に救急隊は医師の署名を待つことなく速やかに帰署し、次の出動に備えられる。また、医療機関側でも申し送り票を取得することが可能となる。
(Smart119 Inc.「株式会社Smart119が「東広島市救急業務システム(HECRS)」の運用を開始」参照。)
●『HECRS』は、以下の意味を持つ名称
・H:東広島市
・E:救急(Emergency)
・C:包括的(Comprehensive)
・R:合理的(Rational)
・S:Smart119
ビジネスにおける『改善の4原則ECRS(イクルス)』(Eliminate:無駄な作業を無くす、Combine:似た作業をまとめる、Rearrange:作業の順序や手順などを再整理する、Simplify:作業をより単純化する)から引用し、本救急システムが導入される経緯や意思を反映し「救急業務を合理的かつ包括的に改善する」ことを込めている。
(Smart119 Inc.「株式会社Smart119が「東広島市救急業務システム(HECRS)」の運用を開始」参照。)
事例による成果
■本システムの導入により、以下の改善に繋がった:
1. 救急隊員の現場滞在時間の短縮
2. 病院滞在時間短縮による救急搬送の回転率向上
3. 救急報告書作成時間の短縮により救急隊員の訓練時間の確保や休息時間の確保
● 詳細効果
・従来の紙用紙の活動記録表の電子化で、傷病者情報等を「指令→救急隊→医療機関→報告書作成」まで限りなくシームレスな形で繋げることが可能となった。
・搬送困難時は、複数医療機関へ同時に搬送受入依頼ができる機能を搭載したことで、時間短縮が図れるようになった。
・患者監視装置とBluetooth連携することでリアルタイムでバイタルサインの数値がタブレットに反映されたり、交通事故等の状況、外傷の状況などを画像で医療機関に送付できる。これにより、医療機関への収容依頼時に、互いに氏名やバイタルサイン、写真等を見ながら会話できるので、早期に共通認識が行え、時間短縮につながった。
・指令センターや患者監視装置と連携することが可能となり、指令場所やデータを自動的に取り込むことで、救急隊が傷病者の観察により注力できる環境を整えることができた。
・活動中に入力した傷病者情報等のデータを報告書システムと連携させることにより、頻発する救急出動を担う救急隊の休息や訓練時間の確保につながっている。
● 初年度(令和5年度)のシステム導入効果
1. 現場滞在時間(救急現場に到着してから現場を出発するまでの時間)
導入当初は、医療機関、救急隊ともにシステムに不慣れなこともあり、なかなか効果が表れなかったが、夏ごろから短縮し始め、最終的には時間短縮の効果が現れた。
→R4 年度平均16.1分、R5 年度平均 15.5 分(0.6 分の短縮)
2. 病院収容所要時間(119番通報の覚知から病院に搬送するまでの時間)
年度を通して時間短縮の効果が現れた。
→R4 年度平均 46.3 分、R5 年度平均 43.0 分(3.3 分の短縮)
事例の継続性
継続運用中
事例の運用期間
令和 5(2023)年 4 月~継続運用中
参考資料
本事例は、「東広島市【救急DX化】東広島市救急業務システムHECRS(イクルス)について」を中心として、以下の資料を参照して編集しています。
※ 以下の資料の参照先は、調査時点でのものです。参照先の構成によっては、リンク切れとなっている場合があります。あらかじめご承知おきください。
■東広島市
・【救急DX化】東広島市救急業務システムHECRS(イクルス)について 更新日:2024年09月06日
https://www.city.higashihiroshima.lg.jp/soshiki/shobo/1/3/41087.html
■Smart119 Inc.
・株式会社Smart119が「東広島市救急業務システム(HECRS)」の運用を開始 2023.03.30
https://smart119.biz/pr/000602.html
・(メディア紹介)4月17日配信、NHK広島『広島 NEWS WEB』で『東広島市 情報共有で搬送時間短縮の新システム』と、当社が開発し4月より運用されている救急医療情報システムが紹介されました。 2023.04.19
https://smart119.biz/news/000614.html
・企業ストーリー
https://smart119.biz/company/story.html
■総務省
・東広島市救急業務システムについて
https://www.soumu.go.jp/main_content/000885457.pdf
■PR TIMES
・東広島市が救急医療支援システム「Smart119」導入を決定、救急隊の現場・病院滞在時間の大幅削減を目指す 2022年7月19日
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000087.000056624.html
事例に関する問い合わせ先
消防局 警防課 救急対策室
Tel: 082-422-5648
Fax: 082-422-7248
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