NPO法人グリーンバレー「神山ワーク・イン・レジデンス~アートを起点とした地域創生プロジェクト~」

展開地域名: 徳島県神山町

分野:
教育
中小企業支援
地域活性化
移住、サテライトオフィス
キーワード:
人材育成
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解決すべき課題

■神山町は過去 50 年で人口が約 3 分の 1 に激減し、農業・産業の担い手不足や技術・伝統の継承は困難となり、住民生活そのものの安全と安心すら危ぶまれるほど過疎問題が深刻な状況となりつつあった。

解決の手法

■NPO法人グリーンバレーは、場所を選ばない働き方が可能な企業の誘致による、地域で生まれ育った若者たちの雇用の場の創出、また、地域に雇用がない、仕事がないのであれば、ワークインレジデンスという手法で、仕事を持った移住者や、仕事をつくってくれる起業者の誘致、そして、神山塾という、職業訓練も積極的に行いつつ、この後継人材の育成を図るといったプロジェクトに取り組む。
(総務省「【大南 信也 NPO 法人グリーンバレー理事長】 」参照。)

<具体的な取り組みと経緯>

● 1997 年、県の「国際文化村構想」を具体化するプログラムとして「アートの力」に注目。1999 年に毎年国内外のアーティストを招き、町内住み込みで創作活動を行うアートプログラム「神山アーティスト・イン・レジデンス(KAIR)」を開始した。

【神山アーティスト・イン・レジデンス】

 国内外の芸術家を神山町に招いて、地域住民との協働による創作活動等で交流を深め、作品展覧会を実施する、国際的なアート・プロジェクト。(徳島県観光情報サイト 阿波ナビ「神山アーティスト・イン・レジデンス2023」より。)

・アーティストの口コミ等で年々評判が高くなり、定住を始める作家も表れる。一方、事務局はアーティストの民泊先や生活支援・アトリエとなる空き家の斡旋等の移住支援ノウハウを蓄積。2020 年までの 22 年間に、23 か国から 80 名近い芸術家が滞在。作品が残されていくとともに、2002 年頃より芸術家の移住が始まる。

● 2005 年に町内に光ファイバ環境が整備されたことを切欠として新たな情報発信方策を探索。

● 2007 年外部有識者のアドバイスを得て、広範な「人」に焦点を当て、KAIRで培ったノウハウを活用できる若者移住支援プログラム「ワーク・イン・レジデンス(WIR)」を町の移住交流の支援事業を開始した:

・「過疎地域には雇用がない仕事がない」という課題を、仕事を持った人の移住によって解決を図る仕組み。

・将来、町にとって必要と考えられる働き手や起業家などを逆指名する。徳島県や町の移住者支援制度を活かし、移住先の古民家やオーナーとの交渉などをバックアップする。

・当初、職種技能を持つ人材の受け入れを想定していたが、事業を進める過程で ICT関連事業者のサテライトオフィスのニーズがあることが判明し、県の協力を得ながら方向転換。

・神山町の地域資源や地域サポーター情報等の発信を行い、活発な神山ネットコミュニティの就業希望者とのマッチングを行う「神山ワーク・イン・レジデンス」Webシステムを構築展開し、地域サポーターの ICT人材育成から就業者テレワークネットビジネス支援まで、人材育成と情報通信技術により地域に新しい仕事や雇用の創出を支援。

 < 「神山ワーク・イン・レジデンス」Webシステムの特徴と機能>

  地域の空き事務所等の情報発信と神山ネットコミュニティからの就業人材のマッチングを行う:

  ① 会員機能:

  ・会員を管理する機能を提供する。
   ー会員情報登録、ブログ機能 等

  ② 募集機能・人材マッチング機能:

  ・人材を募集する機能を提供する。
   ー人材スカウト機能、アピール登録機能、掲示板機能、つぶやき機能、アルバム管理機能、ビデオチャット機能 等

  ③ 地域資源活用促進機能:

  ・空き屋、空き店舗、空き耕作地の維持・活用支援、移住促進を行う機能を提供する。
   ー空き不動産情報登録、契約結果登録、空き不動産の検索機能、アピール登録機能、空き不動産契約歴検索機能 等

(一般財団法人 全国地域情報化推進協会(APPLIC)「(「地域情報化大賞」地域活性化部門賞受賞)日本の田舎をステキに変える「サテライトオフィスプロジェクト」等(NPO法人グリーンバレー(徳島県神山町)」参照。)


・神山町で新しいビジネスコミュニティを創造し、地域発の先進的なサービスやビジネスを生み出すことを目的に、1 日から利用できる「コワーキングスペース(共同の仕事場)として神山バレー・サテライトオフィス・コンプレックス(KVSOC)」を設置・運営。

 ー情報技術、デザイン、映像関連等のクリエイティブ産業の集積を促進するとともに、起業家やその支援者、地域住民等との交流を通じて、新たな価値の創出を目指す。

・「いつもの仕事を、ちがう場所で」をコンセプトに、町に進出したサテライトオフィスに興味を持ち、視察に来るビジネスマンに、1 週間程度滞在して神山での新たな働き方を体験してもらうための宿「WEEK神山」が(KVSOC)の向いにオープン。WEEK神山は、宿泊者とサテライトオフィスの関係者、地元住民をマッチングする役割も担う。

● 神山塾

・2010 年 12 月より、若年の移住者を呼び込むため、「求職者支援訓練(厚生労働省)」を活用し、半年間の滞在型人材研修を実施。神山塾では、20 代後半~30 代前半、東京周辺、独身女性、クリエイター系の若者を中心に多数参加。

(関西広域連合「神山プロジェクト」参照。)

● 神山町は、総務省からの支援により、

・基盤整備事業(H12, 16 年度に総額約 3 億円、神山町の地域公共ネットワーク等を整備)、
・利活用事業(H19 ~21 年度に総額約 9千万円、神山ワーク・イン・レジデンスのWebシステム等を整備)を実施。

(総務省「ICTによる地方創生の成功事例(徳島県神山町モデル)」より。)

解決における工夫点

● グリーンバレーでは、「やったらええんちゃう」を合言葉に、固定観念にとらわれず、自分たちが楽しいと思えることを実行。また、外部者に対しても、神山町でやりたいこと(起業・アート活動など)を「やったらええんちゃう」と受入れ、後押しする寛容性が人々を引きつけている。

● 「アーティスト・イン・レジデンス」の取組みが、グリーンバレーの活動の原点の一つ。芸術家などの外部者を20年近く定期的に受け入れ、外部者を受け入れる風土が培われていた。

● TV のデジタル化に対応するため、国の補助金を活用し超高速ブロードバンド環境を町全体に整備。ネット環境は、都市部よりも安価で快適。

● 商店街の空家、空き教室、地域固有の古民家などの既存のインフラを転活用し、ITインフラを整備することで、生活拠点としての魅力も高めることにより、産業や働き手、人々を広域的に惹きつけることができている。

● 徳島県の移住交流支援施策にも参画し、複数のボランティア団体がNPO法人グリーンバレーを構成し、住民が主体的に地域の活性化に取り組んでいる。

(関西広域連合「神山プロジェクト」参照。)

事例による成果

● ITベンチャー、映像・デザイン会社などが、サテライトオフィスの設置や本社移転、新会社を設立。また、神山町の中心産業は農林業だったが、サテライトオフィスの誘致により、エンジニア、プログラマー、営業(オンライン)など、今までにない職種で新たな雇用を創出。

● 企業のサテライトオフィスや起業者を誘致することにより、町の中で経済が循環。また、進出企業が地元で人材を採用し、新たな雇用を創出:

・2010 年 10 月に始まったサテライトオフィスの商店街の空き店舗への誘致の進展、飲食店等の誘致により新しい商店街を形成、相乗効果が生まれた。若年就業者や県内外からの来町者が増加し、レストランや宿泊施設等のサービス産業を活性化。また、そこで消費される食材(有機農産物)の生産を喚起することで経済効果が農業まで波及。

● WEEK神山では、経営者やスタッフ、町民も参加した食事会が不定期で開催されており、宿泊客も参加できる。ワークショップも時々開催されており、移住者と住民が交流する場となっている。

(一般財団法人 全国地域情報化推進協会(APPLIC)「(「地域情報化大賞」地域活性化部門賞受賞)日本の田舎をステキに変える「サテライトオフィスプロジェクト」等(NPO法人グリーンバレー(徳島県神山町)」、関西広域連合「神山プロジェクト」参照。)

● 神山塾の成果:

・2010 年 12 月開始以来、卒業生の約半数は神山町へ移住。また、誘致したサテライトオフィスへ就職する者や、卒業生同士のカップルも誕生。(関西広域連合「神山プロジェクト」参照。)

● 本ワーク・イン・レジデンスの取り組みは、地域情報化大賞(主催:総務省)で部門賞を受賞。(2015 年 3 月)


【今後の課題と展開】

 [ポイント]: ICT を活用した地域に必要な「ひと」の誘致

 [今後]:地域資源を活用した新たな価値の創造(新事業の取組や新商品の開発など)

(一般財団法人 全国地域情報化推進協会(APPLIC)「(「地域情報化大賞」地域活性化部門賞受賞)日本の田舎をステキに変える「サテライトオフィスプロジェクト」等(NPO法人グリーンバレー(徳島県神山町)」参照。)

事例の継続性

継続運用中

事例の運用期間

1999 年~継続運用中

参考資料

本事例は、「総務省 神山ワーク・イン・レジデンス」を中心として、以下の資料を参照して編集しています。
※ 以下の資料の参照先は、調査時点でのものです。参照先の構成によっては、リンク切れとなっている場合があります。あらかじめご承知おきください。

■総務省

・「神山ワーク・イン・レジデンス」 実施団体:NPO法人グリーンバレー(実施エリア:徳島県神山町)
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/top/local_support/ict/data/494/f098804_jirei_h26.pdf

・神山プロジェクトのポイント
https://www.soumu.go.jp/main_content/000675516.pdf

・【大南 信也 NPO 法人グリーンバレー理事長】
https://www.soumu.go.jp/main_content/000675523.pdf

・働き方の変化(テレワーク)を活用した地方創生 特定非営利活動法人グリーンバレー理事長 大南信也 資料3-2
https://www.soumu.go.jp/main_content/000324372.pdf

・補足資料:総務省主催サテライトオフィスマッチングセミナー(2022.11.09)
徳島県神山町におけるサテライトオフィスの展開~ 地域とともに生み出す 「想像を超える創造」 ~
https://www.soumu.go.jp/satellite-office/pdf/top/example01_20221109.pdf

・地方創生に資する「地域情報化大賞」表彰事例の発表 平成27年1月23日
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu06_02000073.html

●ICT地域活性化ポータル

・日本の田舎をステキに変える「サテライトオフィスプロジェクト」 等
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/top/local_support/ict/jirei/2017_073.html

 ーICTによる地方創生の成功事例(徳島県神山町モデル)
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/top/local_support/ict/data/taisho/pdf/06_tokushima.pdf

■一般財団法人 全国地域情報化推進協会(APPLIC) 
https://www.applic.or.jp/

・(「地域情報化大賞」地域活性化部門賞受賞)
日本の田舎をステキに変える「サテライトオフィスプロジェクト」等(NPO法人グリーンバレー(徳島県神山町))
https://www.applic.or.jp/pdf/futuer_18/04/03.pdf

■関西広域連合

・神山プロジェクト
https://www.kouiki-kansai.jp/material/files/group/7/kamiyama.pdf

■神山町

・神山への移住
https://www.town.kamiyama.lg.jp/immigration/

■徳島県観光情報サイト 阿波ナビ

・神山アーティスト・イン・レジデンス2023
https://www.awanavi.jp/archives/event/1876

■宮崎県

・宮崎県総合計画審議会(2021年11月10日) 徳島県神山町~人口5000人の小さな町はなぜ進化し続けるのか?
https://www.pref.miyazaki.lg.jp/documents/66504/66504_20220104155628-1.pdf

■四国銀行

・サテライトオフィス・ワーケーションが地域を変える~テレワーク時代における企業や人の誘致~ 2022年5月25日 四国経済連合会 四国アライアンス地域経済研究会
https://www.shikokubank.co.jp/newsrelease/assets/20220525_3.pdf

■WirelessWire News

・徳島県神山町はいかにして「地方創生の聖地」になったのか(神山町サテライトオフィスレポート) 2019.10.01
https://wirelesswire.jp/2019/10/72412/

関連する図表・動画

●総務省動画チャンネル
・日本の田舎をステキに変える「サテライトオフィスプロジェクト」等
https://www.youtube.com/watch?v=LiZcv2mNMOk

事例に関する問い合わせ先

NPO法人グリーンバレー
電話: 088-676-1177(代表)
E-mail: greenvalley.kamiyama [atmark].gmail.com
※スパム対策としてメールアドレスを一部変更して記載してあります。
eメールを御送付の際は、「[atmark]」を「@」に変えてご利用ください。

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