展開地域名: 香川県
解決すべき課題
■香川県立中央病院は、県指定の救命救急センターとして、県内外から年間 1 万 1000 人超の救急患者を受け入れている。心肺停止など重症度の高い患者も多く救急搬送される同院では、患者本人から情報が得られないといった救急現場における課題があった。
●救急の場合、多くは事前の情報がない状態で診ることになる。患者本人がまったく話せない状態であれば、情報が完全にゼロのところから診療を始めなければならない。
● 受診したことのある医療機関に患者情報を問い合わせることは、救急搬送が多くなる土日や夜間には難しい。平日の昼間なら、事務スタッフや主治医の先生に電話すれば FAX などで情報を送ってもらえることもあるが、お互いに手間がかかる。
(FUJITSU「導入事例 香川県立中央病院様」参照。)
解決の手法
ーかがわ遠隔医療ネットワーク(K-MIX)ー
■香川県では、2003 年度に香川県と香川県医師会、香川大学医学部が一体となって運用する遠隔画像診断の支援を主体とした「かがわ遠隔医療ネットワーク(K-MIX)」を稼働した。本ネットワークは 2003 年当時としては、最先端の技術を用いた遠隔画像診断支援システムで、香川県の一般財源で実現した全国初の取り組み。
● K-MIX は、従来の遠隔医療システムで一般的であった医療機関→医療機関という画像や診療情報の伝送形態をとらず、医療機関外部のデータセンター(四国電力の関連会社、STNet)にサーバを設置し、依頼側からセンターサーバに送られた画像や診療情報を、支援側が見に行くという方式を採用。
● K-MIX の基本的な機能:
・CT や MRI 画像の返信(報告)、患者紹介、検査依頼、クリティカルパス連携機能があり、情報の形式はすべて DICOM、HL7 の標準形式に基づいている。そのため、各病院の基幹電子カルテとネットワーク上で直接接続することが容易で、地域で運用される地域医連携システムとの相互接続、運用も可能。
・DICOM、JPEG 形式に加え、動画や音声情報、MFER(医用波形標準化記述規約。心電図、脳波などの波形情報に関する日本発の世界標準形式)など、あらゆる形式のファイルの伝送が可能。扱う疾患に関しても、脳卒中および糖尿病地域連携クリティカルパスの機能が実装、強化されている。
(香川大学「かがわ遠隔医療ネットワーク(K-MIX)の開発と今後の展開―電子処方箋ネットワーク、電子お薬手帳、そしてどこでも MY 病院構想の実現へ―]
より。)
ー「K-MIX+」への進化 ー
■ このシステムをさらに発展させ、2014 年に「かがわ医療情報ネットワーク(K-MIX+)」の運用を開始。K-MIX+ は、香川県内にある 16 の中核病院の電子カルテをかかりつけ医が参照できるシステムで、中核病院に紹介した患者のカルテや画像を確認することができる。
ー「K-MIX R」への進化ー
■2021 年に K-MIX と K-MIX+ は、香川県と香川県医師会が共同で発足させたかがわ医療情報ネットワーク協議会の運営のもと、K-MIX R(かがわ医療情報ネットワーク)として進化。K-MIX R の “R” には「Reborn(生まれ変わり)」「Revolution(変革)」「Resolution(決意)」の 3 つの意味を込めている。
● K-MIX+ では、診療所・クリニックから中核病院の診療情報のみ閲覧可能という一方通行で、中核病院から診療所・クリニックの情報を閲覧することができなかった。K-MIX R によって、香川県内の医療関連施設(病院・診療所・調剤薬局・企業等)を情報ネットワークで繋ぎ、医療情報を相互に共有することで、質の高い医療サービスを実現する仕組みができた。
● K-MIX R では患者による「包括同意」を採用。K-MIX+ は「個別同意」だったため、患者の同意取得が煩雑になっていた。「個別同意」とは、複数の医療機関を受診している患者の情報を得たいと思った際に、各医療機関ごとに患者さんの同意が必要になる仕組み。「包括同意」では、1度の同意で複数施設間での情報共有が可能となる。
(MSD「Move Vol.11」、K-MIX R「K-MIX Rとは 全国初のITによる全県的な医療連携 かがわ医療情報ネットワーク」参照。)
事例による成果
■ K-MIX R の評価:
● 医院・クリニック・診療所からの評価:
・過去の診療情報、病歴情報等が正確に確認がとれる。
・他院の先生やスタッフ等に手間をかけずに情報が得られ易くなった。
・K-MIX R を見ると、複数科のカルテが見られるので、どの診療科がどのように関わっているかが分かる。
・県立中央病院に紹介した患者の紹介先での状態を確認できる。K-MIX R で中核病院の情報を見ていると、当院に帰ってきたときに、患者に説明することができ、その後の治療でも、中核病院と共同して診療に当たれるので、検査や治療方針などのアドバイスをいただきながら、治療を行うことも多く、利用の意義は大きい。
(K-MIX R「活用事例 K-MIX R(医療機関情報システム)」、「ご利用いただいている皆様の実際の活用事例」より。)
● 薬局からの評価:
・K-MIX R では患者が言ってくれない診療情報まで見られる。
・検査データを見て食生活でのアドバイスがしやすくなり、服薬指導に活かす事ができる。
(K-MIX R「活用事例 K-MIX R(医療機関情報システム)」より。)
事例の継続性
継続運用中
事例の運用期間
2021 年~継続運用中
参考資料
本事例は、「2022年度 冬のDigi田甲子園 命をデジタルで繋ぐ!かがわ医療情報ネットワークK-MIXR」を中心として、以下の資料を参照して編集しています。
※ 以下の資料の参照先は、調査時点でのものです。参照先の構成によっては、リンク切れとなっている場合があります。あらかじめご承知おきください。
■デジタル田園都市国家構想 DIGIDEN
●2022年度 冬のDigi田甲子園
・命をデジタルで繋ぐ!かがわ医療情報ネットワークK-MIXR
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digitaldenen/koshien_winter/0011.html
・冬のDigi田甲子園 結果発表
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digitaldenen/koshien_winter/index.html
■政府インターネットテレビ
・【かがわ医療情報ネットワーク協議会】命をデジタルで繋ぐ!かがわ医療情報ネットワークK-MIX R
https://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg25985.html
■FUJITSU
・導入事例 香川県立中央病院様
https://www.fujitsu.com/jp/solutions/industry/healthcare/casestudies/chiiki/201708/
■香川県
・香川県 医療情報総合サイト ページID:11651 公開日:2020年12月10日
https://www.pref.kagawa.lg.jp/imu/kenmin/kfvn2.html
・医療情報ネットワーク ページID:11636 公開日:2021年1月13日
https://www.pref.kagawa.lg.jp/imu/iryoushisaku/kfvn2-3.html
・資料① 香川県産業成長戦略 (案) (概要)
https://www.pref.kagawa.lg.jp/documents/11796/kondankai_5_1.pdf
・資料2「香川県産業成長戦略」の進捗状況
https://www.pref.kagawa.lg.jp/documents/11797/kondankai_1_2.pdf
・平成26年9月県議会定例会提出議案 知事説明要旨
https://www.pref.kagawa.lg.jp/yosan/gian/teian2609.html
■K-MIX R
https://kmix-r.jp/
・K-MIX Rとは 全国初のITによる全県的な医療連携 かがわ医療情報ネットワーク
https://kmix-r.jp/about/
・活用事例 K-MIX R(医療機関情報システム)
https://kmix-r.jp/users_voice/intermedical.html#%E8%97%A4%E5%B7%9D%E5%8C%BB%E9%99%A2P
・ご利用いただいている皆様の実際の活用事例
https://kmix-r.jp/users_voice/
・かがわ医療情報ネットワーク K-MIX R 操作説明会資料
https://kmix-r.jp/info/wp-content/uploads/sites/2/2021/03/KMIXR_instruction.pdf
・2023.03.16『K-MIX R 情報定期便』(4回目)
https://kmix-r.jp/info/2023/03/16/teikibin04/
ー『K-MIX R 情報定期便』(4回目)
https://kmix-r.jp/info/wp-content/uploads/sites/2/2023/03/20220316_teikibin04.pdf
・2021.12.28 1/2(日)NHK BS1スペシャルで紹介されます
https://kmix-r.jp/info/category/%E3%83%A1%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%A2%E6%8E%B2%E8%BC%89/
■香川大学
・「かがわ遠隔医療ネットワークから日本版EHRへの発展」~医療従事者中心の電子カルテネットワークから住民中心の生涯健康カルテへ~
http://www.kagawa-u.ac.jp/setouchi/h2021houkoku12hara.pdf
・かがわ遠隔医療ネットワーク(K-MIX)の開発と今後の展開―電子処方箋ネットワーク、電子お薬手帳、そしてどこでも MY 病院構想の実現へ―
https://www.kagawa-u.ac.jp/setouchi/r03-db-medical-114-201312.pdf
■MSD
・Move Vol.11
https://www.msdconnect.jp/wp-content/uploads/sites/5/2022/05/dc_move2022vol11.pdf
関連する図表・動画
●デジタル田園都市国家構想実現会議事務局
・11.【かがわ医療情報ネットワーク協議会・香川県】命をデジタルで繋ぐ!かがわ医療情報ネットワークK-MIXR
https://www.youtube.com/watch?v=kxAdGj5KcRo
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