京都府舞鶴市「ブランド京野菜「万願寺甘とう」データを活用したスマート栽培による持続可能な産地づくり」

展開地域名: 京都府舞鶴市

分野:
農林水産業支援
スマート農業
キーワード:
自動化
業務効率化
ワークフロー
IoT

←戻る

解決すべき課題

■舞鶴市は、SDGs未来都市として、企業や大学等の多様な主体と連携し、まちづくりに積極的に先進技術を活用することで「ITを活用した心が通う便利で心豊かな田舎暮らし」を実現することに取り組んでいる。

● こうした中、主要な産業である一次産業の生産量拡大や高収益化による所得の安定が大きな課題となっている。

・ブランド力が高い「万願寺甘とう」は栽培管理が非常に難しく、生産者の栽培の工夫も人により異なり、収穫量の“ばらつき”が大きい。

・高収量生産者のノウハウを教え合うなど部会内での情報共有を積極的に行っているが、生産地も点在し、栽培環境(温度、湿度、土壌水分量など)を明確に共有するための数値や統一された基準がない。

・舞鶴市発祥のブランド京野菜であり代表的な特産品である「万願寺甘とう」について、市をあげて生産体制の強化を図ってきたが、収量拡大は価格の低下につながりかねず、持続可能な産地づくりに繋げていくためには、生産時期調整など収量拡大と価格安定化の両立が必要。

解決の手法

■舞鶴市、KDDI ㈱、甘とう部会、普及センター等が連携し、IoT機器を通じたデータ利活用型のスマート万願寺栽培を実装することにより、万願寺甘とうの生産量の安定化・収量向上を実現するとともに、伝統野菜を核とした産地づくりを推し進め、担い手の育成・確保等にも繋げることにより、持続可能な一次産業の振興を図る取組の実施。

● 舞鶴市は、まずはブランド京野菜である万願寺甘とうなどで高収益化に取り組むこととし、魅力創出や課題解決に向けて、2018 年 12 月地域活性化を目的とする連携協定を締結した KDDI ㈱ や生産者団体である甘とう部会をはじめ関係団体等と連携し、相互理解を深めながら、生産現場の実情やデジタル技術の有効性について情報共有や協議を積み重ね、農業分野への ICT/IoT 活用を協議してきた。

・甘とう部会において、デジタル技術への理解が深まり、生産へのデジタル技術導入の必要性を感じる生産者による継続的な取組体制が成立した。

● 京都府舞鶴市と KDDI ㈱ は、農業の安定化と効率化を目指し、IoTを活用した万願寺甘とうのスマート農業事業を 2020 年 3 月 30 日から開始。

・万願寺甘とうの「日照量」、「温度」などの栽培状況を IoTセンサーで見える化し、収集した情報と万願寺甘とうの生育状況との相関を分析し、高収量生産者の好事例を生産者間で共有することを目指す。

1. 栽培データの見える化:

IoTセンサーをハウス内に設置し、万願寺甘とうの生育に関係すると考えられる「温度」「湿度」「日照」「土壌EC(電気伝導度)」「土壌温度」「土壌水分量」「土壌pH(酸性度)」を 10 分ごとに収集し、クラウド上へリアルタイムに蓄積する。データはグラフ化され、パソコンやスマートフォンのアプリケーションから確認でき、自分のハウスや他の生産者のハウスの状況把握、予め設定した値を超えた時にはアラート通知を行うことが可能。

「散水量」は、流量計センサーを使って計測したデータをオフラインで蓄積、定期的にパソコンやスマートフォンなどに転送することで、IoTセンサーで把握した情報に加えて確認ができる。

2. 収集データの分析:

1.で蓄積したデータと万願寺甘とうの生育状況との相関を分析、高収量生産者の好事例を共有していくことで、よりよい万願寺甘とうの栽培知見の確立と収量増加を目指す。

(KDDI「2020年7月22日 京野菜×IoT スマート農業で舞鶴市「万願寺甘とう」の栽培状況を見える化」より。)

解決における工夫点

・スマート農業ではセンサー機器の統一基準が確立されておらず、各生産者の好みでセンサー機器が別々になるところ、甘とう部会として生産者同士が同一システムのセンサーに統一することで、同一規格でのデータ収集が可能となり、異なる環境下での生育状況等が容易に比較できるようになった。

・取得したデータは栽培管理システムで部会員に共有しており、栽培管理システムにアクセスすることで、高収量生産者の栽培環境データや圃場の静止画(生育状況)をいつでも確認することができる。

・システムの共有に加え、定例会でもデータを共有するなど、アナログな手法も併用することで、データによるスマート農業に、経験に基づく個々のノウハウも反映したより実践的な手法を確立した。

事例による成果

● 万願寺甘党の目標生産量と出荷額

・万願寺甘とうの生産量 R3実績:217 トン⇒R4目標:305 トン

・万願寺甘とうの出荷額 R3実績:16,810 万円⇒R4目標:20,000 万円


● 本取り組みは、2022年度 夏のDigi田甲子園「アイデア部門」4位 に選出された。


【今後の展望】

・令和 2 年度からデータ取得を開始し、高収量、高品質化に必要な適正栽培環境の見える化が進んでいるところであり、令和 4 年度においては、部会内での情報共有を促進し、部会員の栽培環境を適性栽培環境に近づけ、収穫量拡大の実現を目指す。

・IoT機器を用いて高収量生産者の栽培環境(温度、湿度、土壌水分量等)のデータを収集・分析するとともに、数値で明確に共有し、データに基づいた栽培手法を確立することで、地域全体での収量を向上させるとともに、出荷時期をずらす等、市場への供給と価格の安定化を実現する。

・病害の影響による生育不良や傷等により出荷できない万願寺甘とうも多いため、データに基づく病害アラートの発出を実装して、病害の発生を抑制し、市場に出荷できる品質の万願寺甘とうの収穫量向上につなげる。

・温度、湿度、土壌水分量等の「栽培環境」に加え、剪定時期や条件等についてもデータ化するとともに、剪定における細かな手法等を映像化するなど、栽培環境以外の要素についてもデジタル技術等を活用して「見える化」し、データに基づく「栽培モデル」の創出を目指す。

・将来的には、栽培環境データと収穫量の相関を分析することにより、産地全体の収穫量予測を実現し、予測を生かした流通量の適正管理により価格の安定化につなげるとともに、舞鶴茶などブランド力の高い他の農産物への応用・展開を図る。デジタル技術とアナログの知見を活用した「栽培モデル」を確立し、他の農産物へカスタマイズすることで、生産者の所得向上と新規就農者も参集しやすい環境へ繋げ、持続可能な産地づくりを目指す。

・将来的にはデータ管理やアナログの知見の活用を、とり貝や岩ガキの育成など水産分野にも展開することで、本市における一次産業全体の発展に結びつけていく。

事例の継続性

継続運用中

事例の運用期間

2020 年 3 月~継続運用中

参考資料

本事例は、「2022年度 夏のDigi田甲子園 京都府の取り組み」を中心として、以下の資料を参照して編集しています。
※ 以下の資料の参照先は、調査時点でのものです。参照先の構成によっては、リンク切れとなっている場合があります。あらかじめご承知おきください。

■デジタル田園都市国家構想 DIGIDEN

●2022年度 夏のDigi田甲子園

・京都府の取り組み
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digitaldenen/archives/koushien/chiiki/kyoto.html

・推薦調書
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digitaldenen/archives/koushien/chiiki/pdf/26-4.pdf

・夏のDigi田甲子園結果発表
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digitaldenen/koshien/kekka/2022_summer/index.html

■政府インターネットテレビ

・京都府舞鶴市|ブランド京野菜「万願寺甘とう」データを活用したスマート栽培による持続可能な産地づくり|夏のDigi田甲子園
https://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg24872.html

■KDDI

・スマート農業が導く、伝統の京野菜「万願寺甘とう」の新境地 2021 4/28
https://biz.kddi.com/beconnected/feature/2021/210428/

・2020年7月22日 京野菜×IoT スマート農業で舞鶴市「万願寺甘とう」の栽培状況を見える化
https://news.kddi.com/kddi/corporate/newsrelease/2020/07/22/4569.html

・2018年12月19日 舞鶴市、舞鶴工業高等専門学校とKDDI、地域活性化を目的とした連携に関する協定を締結
https://www.kddi.com/corporate/sustainability/regional-initiative/pressrelease/20181219/?_ga=2.45965410.794151216.1676539236-600685862.1676539236

■舞鶴市

・【参考資料】連携事業イメージ  舞鶴市 独立行政法人国立高等専門学校機構 舞鶴工業高等専門学校 KDDI株式会社
https://www.city.maizuru.kyoto.jp/shisei/cmsfiles/contents/0000004/4818/renkei.pdf

・SDGs未来都市推進本部
https://www.city.maizuru.kyoto.jp/shisei/category/3-26-0-0-0-0-0-0-0-0.html

・SDGs未来都市・SDGsモデル事業に選定
https://www.city.maizuru.kyoto.jp/shisei/category/3-26-1-1-0-0-0-0-0-0.html

・SDGsな舞鶴市の取り組み
https://www.city.maizuru.kyoto.jp/shisei/0000009421.html

 ー舞鶴市SDGs未来都市の概要+テーマごとの取組   [2022年1月28日]
https://www.city.maizuru.kyoto.jp/shisei/cmsfiles/contents/0000009/9421/2022012809571717.pdf

・SDGs未来都市の取組(プレゼン資料)
https://www.city.maizuru.kyoto.jp/shisei/category/3-26-7-3-0-0-0-0-0-0.html

 ー【防災・減災】モニタリングシステム、スマート農業・漁業(プレゼン資料)

  ーモニタリング、スマート農業・漁業
https://www.city.maizuru.kyoto.jp/shisei/cmsfiles/contents/0000009/9344/bousai.pdf

・III. 舞鶴市の現状・課題と⾒直しのポイント
https://www.city.maizuru.kyoto.jp/cmsfiles/contents/0000004/4028/honpen3.pdf

・令和4年12月28日 仕事納めに伴う部課長会での市長訓示(要旨)[2023年1月4日]ID:10658
https://www.city.maizuru.kyoto.jp/shicho/0000010658.html

・舞鶴発祥・京のブランド野菜「万願寺甘とう」ブランドブックを作成しました
[2016年5月20日]ID:1314
https://www.city.maizuru.kyoto.jp/kankou/0000001314.html

■万願寺甘とう

・2022-10-15 内閣総理大臣賞を受賞しました
http://amatou.kyoto/news

■内閣府 地方創生SDGs

・地方創生SDGs官民連携プラットフォーム 官民連携の事例
https://future-city.go.jp/platform/case/

 ー京野菜×IoT 万願寺甘とうスマート農業プロジェクト 京都府舞鶴市 × KDDI株式会
https://future-city.go.jp/platform/download/data/case2022/A-023.pdf

■JAグループ

・日本農業賞
https://agri.ja-group.jp/promote/prize

 ー第51回事例集
https://agri.ja-group.jp/pdf/promote/prize/2022_toprunner_web.pdf

■農林水産省

・令和4年度(第61回)農林水産祭天皇杯等の選賞について 令和4年10月5日
https://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/bunsyo/221005.html

 ー令和4年度内閣総理大臣賞受賞者受賞理由概要
https://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/bunsyo/attach/pdf/221005-2.pdf

■電波新聞

・KDDI 万願寺甘とうの生産にIoTシステムでサポート 安定生産を目指す 2023.06.14
https://dempa-digital.com/article/443911

関連する図表・動画

●デジタル田園都市国家構想実現会議事務局
・【京都府舞鶴市】ブランド京野菜「万願寺甘とう」データを活用したスマート栽培による持続可能な産地づくり
https://www.youtube.com/watch?v=HTaVVUGirJI

本事例についてのご要望

本ページ掲載事例の、項目の追加・修正・削除等のご要望は地方公共団体DX事例データベースに対するご要望フォームよりお寄せください。

PAGE TOP