長崎県「ローカル5G を活用した専門医の遠隔サポートによる離島等の基幹病院の医師の専門外来等の実現」

展開地域名: 長崎県

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テレビ電話(またはそれに類する動画によるコミュニケーション)
IoT

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解決すべき課題

■長崎県は海岸線が長く、離島や半島など、公共交通などによる移動が困難な地域が多くある。こうした地域では、高度な知識を有する経験豊富な医師の不足と、そうした医師がいる医療機関への距離が遠く、住み慣れた地域で専門的な医療を受けにくい状況にある。
(長崎県「2021年3月24日 ローカル5Gを使った遠隔診療支援に関する実証事業について報道発表を実施します」参照。)

● 長崎県には 8 つの医療圏があり、うち 4 つが離島の医療圏。他県と比較して医師の地域偏在が著しく、本土の専門医による効率的な離島医療支援体制の構築が急務であった。

● 五島列島にある長崎県五島中央病院は、すでに ICT を活用して遠隔医療の試みを行っていたが、高画質画像や動画の伝送では、Wi-Fi や LTE の伝送速度等がボトルネックになっていた。

解決の手法

■ローカル5G の電波伝搬特性の解明及び課題解決システムにおける具体的なアプリケーション(本土の専門医の遠隔サポートによる高度専門医療の提供及び高齢者施設等での遠隔診療・ケアサポート)を想定した高速通信、多数同時接続及び低遅延に関する性能検証及び評価を目的とし、ローカル5G 等の無線通信システムを活用し、以下 2 つの実証実験を実施:

❶ 離島等の基幹病院における、スマートグラスや 4K カメラ映像を介した専門医の遠隔サポートによる高度専門医療提供に関する実証。

❷ 離島等の医師が常駐していない高齢者施設における、看護師が着用したスマートグラス映像を介した遠隔医療・ケアサポートに関する実証。

● 専門外来:

  脳神経内科、皮膚科、消化器内科において、診療上特に視診が重要となる疾患について、現場医師がスマートグラスや 4K カメラの映像をリアルタイムに送信し、専門医の支援を受けながら診療する。

● 手術・緊急医療:

  遠隔手術・救急医療を見据え、執刀医の手元や部屋全体の動きをスマートグラスや 4K カメラを介してリアルタイムにモニタリングすることで、遠隔指導の有効性を検証する (本実証実験えは模擬環境で実証する)。

【実証分析方法】
 
・脳神経内科

 ① 診断(遠隔支援側)の正確性
 ② 映像の状態(画像の鮮明度、画像の乱れ、画像の遅延)
 ③ 患者・医師満足度
 ⇒ ①は遠隔支援シート、②③はアンケートにより評価を行う。

・消化器内科

 ① 映像の状態の評価
 ② 患者・医師満足度
 ⇒ ①②はアンケートにより評価を行う

・皮膚科

 ① 皮疹重症度評価として各症例に応じた方式でのスコアリング
 ② 画像/遅延等の通信状況の評価
 ③ 本形式での診療の印象
 ④ 医師満足度
 ⇒ ①評価シート、②~④はアンケートにより評価を行う

・外科(模擬手術)

 ① 接続の容易さ
 ② 画像の鮮明度
 ③ 画像の乱れ
 ④ 手術支援の実現性、有用性の評価
 ⇒ ①~④は実証中の映像や医療関係者のヒアリ ング等により評価を行う

・外科(模擬救急)

 ① 画像の鮮明度・乱れ・遅延
 ② 支援のスムーズさ
 ③ 意思疎通のやりやすさ
 ④ 医師満足度
 ⇒ ①~④はアンケートにより評価を行う

・遠隔診療・ケアサポート

 ① 主要評価:受診付添い、日常業務の負担感等
 ② 副次評価:画像/音声/伝送、対面診療との比較、満足度等
 ⇒ ①②はアンケートにより評価を行う


・ローカル5G 伝送機器に関しては国内メーカーである ㈱ エイビット社製品を選定。
(総務省 GO! 5G「地域課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証に係る医療分野におけるローカル5G等の技術的条件等に関する調査検討の請負(専門医の遠隔サポートによる離島等の基幹病院の医師の専門外来等の実現) 成果報告書 」より。)

・本実証実験の政策グループを長崎県、技術グループは ㈱ NTTフィールドテクノ、医療グループは国立大学法人長崎大学病院をグループリーダーとし、コンソーシアムとして実施。

 ー県、長崎大学病院、NTT西日本が中心となって、遠隔医療におけるローカル5G 技術の導入を目指し提案書を作成、応募し採択された(長崎県「ローカル5Gを使った遠隔診療支援に関する実証事業を実施しました!」参照)。

(総務省 ローカル5G開発実証成果報告書「地域課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証に係る医療分野におけるローカル5G等の技術的条件等に関する調査検討の請負(専門医の遠隔サポートによる離島等の基幹病院の医師の専門外来等の実現) 報告書 概要版」参照。)

・総務省の令和 2 年度「地域課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証」事業を活用。

解決における工夫点

① 将来の展開・カントリーリスクや機器設置の柔軟性等を考慮し、ローカル5G 伝送機器に関しては国内メーカーである ㈱ エイビット社製品を選定。

② 今回の実証では、病院内の複数診療科で実証を行うため、ローカル5G の基地局、端末ともに、一部機器を可搬可能とし、経済性・効率性を考慮した設計。

③ 映像関係などの周辺機器については一般市販機器を採用し、汎用性や経済性を重視。

④ 医療従事者が操作する機器に関しては、「すでに使用実績があるもの」、「医療機器との接続実績があるもの」を選定し、実証を進めていく医療従事者の負担を軽減するよう効率性を重視し選定。

⑤ 今後の汎用性、拡張性を考慮し、ローカル5G 伝送部分とその他機器との接続については、一般的なインターフェースが使用できる機器を選定。

(総務省 GO! 5G「地域課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証に係る医療分野におけるローカル5G等の技術的条件等に関する調査検討の請負(専門医の遠隔サポートによる離島等の基幹病院の医師の専門外来等の実現) 成果報告書 」の「3.1.3 機能一覧」より)

事例による成果

● 高度専門医療については、どの診療科においても映像から診療支援にあたり十分な情報を得られ、また遅延のないコミュニケーションを通じて前述した課題解決の一端を担うシステムになりうる結果を得ることができた。現場の第一線の医師によって、病院間では遠隔医療での実用に耐えうるという結果がでたことは大きな成果。

● 高齢者施設の診療・ケアサポートについては巡回という仕組みをとっているため「通信の途切れ・遅延」が高度専門医療に比べて発生頻度が高くなるという事象が発生した。これは診療の質を担保するうえで障害となり、今後の課題。


● 実証分析結果詳細:

【脳神経内科】

・診断の正確性 26 項目の診断のうち、23 項目が 100 % の一致率映像の状態

 ・4K カメラ(部屋俯瞰用):解像度・操作性等において問題なし。
 ・4K モニタ:鮮明で臨場感ある映像だった。
 ・スマートグラス:ぶれて見にくかった。
 ・満足度 :
  ー患者:13 /14が大変満足、満足
  ー医師:9 /14が満足

【消化器内科】

・4K 内視鏡映像等が、遠隔地で遅延なく確認でき、上記 4 件の内視鏡診療が可能であった。

・ 検査中の患者の生体モニタや、医療スタッフの動きをしっかり把握することができた。

 以下はアンケート結果(評価は 5 段階 1: 大変悪い (全く実用できない)、2: 良くない (実用に難あり)、3: 普通 (どちらともいえない)、4: 良い (概ね実用できる)、5: 大変良い (実用性に優れている))

 ・映像の状態 4 症例においてすべて評価「5」
 ・患者満足度 3 症例が評価「4」、1 症例が評価「5」
 ・医師満足度(本土側) 4 症例においてすべて評価「5」
 ・医師満足度(離島側) 2 症例が評価「4」、2 症例が評価「5」

【皮膚科】

・4K カメラ(患部接写用)で撮像された映像は診断に必要な情報を提供しており、診察に関わった 4 名の皮膚科専門医が「満足」と答えた。

・4K 映像によって撮像された皮膚表面の影は色調変化なのか、影なのか、わからないことがあったため、無影灯があればより丁寧な観察が可能になると考える。

【外科(模擬手術)】

• 軽度の遅延があったこと以外は、映像の画質、会話の伝達には問題がなく、ローカル5G を用いた遠隔手術指導は十分に可能と考える。

• 今後デバイスの改善や機器配置の改善等、検討/改良が必要である。

 ・接続の容易さ:本土側は満足、離島側は慣れを要した。
 ・画像の鮮明度: 筋繊維、筋膜等の認識は十分に可能。
 ・画像の乱れ: 画像の乱れは見られなかったが、数回動画が停止した。
 ・実現性、有用性 :
  ー音声は明瞭であり、遅延も1秒未満と十分に手術指導に耐えうる。
  ー手術のトレーニング、指導環境として有用である。

【外科(模擬救急)】

・動画の質、コミュニケーションに問題なく、ローカル5G を用いた救急外来における遠隔診療サポートは十分に実用に耐え得ると考える。

・今後はカメラを天井や壁に固定して定点カメラにする等の工夫が必要と考える。

 ・画像の鮮明度・乱れ・遅延:4 名の医師において、鮮明度は 4 名が「良い」以上、乱れ・遅延は 3 名が「良い」以上という評価。
 ・支援のスムーズさ: 4 名中 4 名の医師が「良い」以上という評価。
 ・意思疎通のやりやすさ:14 名中 12 名の医師が「良い」以上という評価。
 ・医師満足度 14 名中 11 名の医師が「良い」以上という評価。

【遠隔診療・ケアサポート】

・「通院による移動負担の軽減」など利点はあったものの、「職員の負担が大きい」「映像のブレ、ゆれでモニタリングしづらい」「通信の途切れ・遅延」など課題が散見された。

 ・主要評価 :
  ー 職員の付き添い負担は強まった。
  ー「急変時の連絡」「処置」についてはオンライン診療介入前より改善。

 ・副次評価 :
  ーコミュニケーションは問題ないが通信の途切れ・断絶があった。
  ー職員は対面診療を支持、利用者は対面診療とオンライン診療で意見がわかれた。
  ー満足度も「どちらでもない」「満足」で結果がわかれた。

(総務省 ローカル5G開発実証成果報告書「地域課題解決型ローカル 5G等の実現に向けた開発実証に係る医療分野におけるローカル5G等の技術的条件等に関する調査検討の請負(専門医の遠隔サポートによる離島等の基幹病院の医師の専門外来等の実現) 報告書 概要版」参照。)

事例の継続性

不明

事例の運用期間

令和 3(2021)年~不明

参考資料

本事例は、「総務省 地域社会のデジタル化に係る参考事例集【第2.0版】令和4年9月2日」を中心として、以下の資料を参照して編集しています。
※ 以下の資料の参照先は、調査時点でのものです。参照先の構成によっては、リンク切れとなっている場合があります。あらかじめご承知おきください。

■総務省

・地域社会のデジタル化に係る参考事例集【第2.0版】令和4年9月2日
https://www.soumu.go.jp/main_content/000835268.pdf

・GO!5G

 ーローカル5G開発実証成果報告書
https://go5g.go.jp/carrier/l5g/

  ー地域課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証に係る医療分野におけるローカル5G等の技術的条件等に関する調査検討の請負(専門医の遠隔サポートによる離島等の基幹病院の医師の専門外来等の実現) 成果報告書 
令和 3 年 3 月 25 日 株式会社 NTT フィールドテクノ
(コンソーシアム:長崎県・国立大学法人長崎大学病院・長崎県五島中央病院・
社会福祉法人なごみ会・医療法人井上内科小児科医院)
https://go5g.go.jp/sitemanager/wp-content/uploads/2021/05/%E4%BB%A4%E5%92%8C%EF%BC%92%E5%B9%B4%E5%BA%A6L5G%E9%96%8B%E7%99%BA%E5%AE%9F%E8%A8%BC%E6%88%90%E6%9E%9C%E5%A0%B1%E5%91%8A%E6%9B%B8_No18_%E5%B0%82%E9%96%80%E5%8C%BB%E3%81%AE%E9%81%A0%E9%9A%94%E3%82%B5%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%88%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E9%9B%A2%E5%B3%B6%E7%AD%89%E3%81%AE%E5%9F%BA%E5%B9%B9%E7%97%85%E9%99%A2%E3%81%AE%E5%8C%BB%E5%B8%AB%E3%81%AE%E5%B0%82%E9%96%80%E5%A4%96%E6%9D%A5%E7%AD%89%E3%81%AE%E5%AE%9F%E7%8F%BE.pdf

  ー地域課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証に係る医療分野におけるローカル5G等の技術的条件等に関する調査検討の請負(専門医の遠隔サポートによる離島等の基幹病院の医師の専門外来等の実現) 報告書 概要版 
令和3年3月25日 株式会社NTTフィールドテクノ(コンソーシアム:長崎県・国立大学法人長崎大学病院・長崎県五島中央病院・社会福祉法人なごみ会・医療法人井上内科小児科医院)
https://go5g.go.jp/sitemanager/wp-content/uploads/2021/05/%E4%BB%A4%E5%92%8C%EF%BC%92%E5%B9%B4%E5%BA%A6L5G%E9%96%8B%E7%99%BA%E5%AE%9F%E8%A8%BC%E6%88%90%E6%9E%9C%E5%A0%B1%E5%91%8A%E6%9B%B8%EF%BC%88%E6%A6%82%E8%A6%81%E7%89%88%EF%BC%89_No18_%E5%B0%82%E9%96%80%E5%8C%BB%E3%81%AE%E9%81%A0%E9%9A%94%E3%82%B5%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%88%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E9%9B%A2%E5%B3%B6%E7%AD%89%E3%81%AE%E5%9F%BA%E5%B9%B9%E7%97%85%E9%99%A2%E3%81%AE%E5%8C%BB%E5%B8%AB%E3%81%AE%E5%B0%82%E9%96%80%E5%A4%96%E6%9D%A5%E7%AD%89%E3%81%AE%E5%AE%9F%E7%8F%BE.pdf

■長崎県

・知事のページ 令和4年5月30日 記者会見
https://www.pref.nagasaki.jp/koho/governor/kaiken/20220530-1.html

・離島・へき地医療支援センター
https://www.pref.nagasaki.jp/bunrui/hukushi-hoken/iryo/ritouhekitisienn/

・ローカル5Gを使った遠隔診療支援に関する実証事業を実施しました!
https://www.pref.nagasaki.jp/bunrui/hukushi-hoken/iryo/local5g/

 ー2021年3月24日 ローカル5Gを使った遠隔診療支援に関する実証事業について報道発表を実施します
https://www.pref.nagasaki.jp/shared/uploads/2021/03/1616637032.pdf

 ー実証実験概要等
https://www.pref.nagasaki.jp/shared/uploads/2021/03/1616637019.pdf

事例に関する問い合わせ先

長崎県福祉保健部 医療人材対策室
Tel: 095-895-2421

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